宮永 蕗 詩を置く場所

自作の詩を置いておきます。感想歓迎。

【詩】日時計

落日に抗って
息、吹きかえそうとする
もわり、熱帯びた風
西日浴びる玄関脇
首うなだれて
影を立つ
みっしりと種詰んだ
向日葵
切り落とし
並べて晒す

やってきた
子供がひとりしゃがみこみ
先の尖った木の枝で
じゃくじゃくと
穿ち、
掘り崩し、
埋めるかと聞けば
鳥にやるという。
そうだね
何せたくさんの、たくさんの種、
天近く、
遠くまで、
散ラせ

マワレマワル日時計
今日ノ血トナリ肉トナリ
アルイハ明日ノ肥トナッテ

歌え
哀シむ訳がない

夏終わり
斬首された向日葵の頭
かち割って
地に
こぼれた種に無数の縞

痩せた砂地に
兆す黄緑
人の背丈より高く
ジリ、ジリリ、
支えかねる黒い頭、
斬首せよ



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【詩】小さな生き物

ぽりぽりと音をたてて
煎餅をかじっている小さな生き物よ
私がいなければ
お前はいなかった
私のこれまでがなかったら
お前はいなかった
無条件に
お前は私にとってよいのだから
私もまたよいのだ

森からさまよいでてきたみたい
口だけもぐもぐ動かしている奇妙な生き物よ
お前がいることで
私は許された
私に許された
初めて、許された


ただまっすぐに伸び繁ること
その根が大地に深く根差していること
森の木は疑うことを知らない
それは私が受け取り損ねた贈り物
追いかけてきて届けてくれたお前に
私はきちんと渡したいから
どんなに気持ちが落ちたときも
どんなに挫折したときも
私は私を大事にします
 お前が 私が 居ること
断崖に生えた痩せ松のように
寒風に縮こまる私を
ほんとうは包んでくれていた、暖かい

もう今は
ふぅふぅと寝息を立てている、娘の
うぶ毛の生えた小さな耳に囁く
  ここにあるよ ちゃんとある



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中庭

中庭


音も
そよぎもなく
濃緑の、葉裏の白の、オリーブの、
素焼きの大鉢
敷き均された
テラコッタ調タイル
四方囲う
塗りの外壁
ろ過された
日光が
気がつかぬほど
ゆっくりと
て、さしのばす
一鉢の
オリーブ


ぬける天つたう
荒みゆく濁り、嵩を増し
やがて切りとられ
おちてくるあまつぶは
今、はぜ散った
我がオリーブの暗緑と
舞い込んできた
出自のしれぬ
土まみれの掌のような褐色を
叩くように
染み


繰る日常に
溜め息はつかない
かわいた音で掃ききよめる
この胸に
オリーブのある空間を
容れている
いつしか壁崩れるとき
還るかしらぬ
中の庭



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【詩?】ユリは


ユリは


 フェンシングの剣先よろしくのど元に、突き付けるように差し出されたのは、白いユリの花だった。
 後になって「そのユリどうしたの」と問う同僚に、「告白かってドキドキしちゃった」などと面白可笑しく説明したものの、すっかり中年にもなると有り得ないことは夢想もしないもの。そのとき思ったのはただ「何でユリ?」ということだった。
 忘れ物として届けられた一本のユリは透明なフィルムに包まれて、八分ひらいた花一つ、つぼみ一つ、つけたまま萎れはじめていた。
 じっくり見れば見るほど、持ち主が取りに戻ることはない気がした。けれどももしかしたら、と花瓶には挿さずにおく。茎の切り口に水でたっぷりと濡らしたキッチンペーパーを巻き、その上からラップをかけてゆるく輪ゴムでとめ、誰も使い手のいないデスクにそっと横たえた。
 もしもピンク色のチューリップだったなら、時節柄、卒業式の帰り道や、花屋の店先でつい買ってしまった春めいた忘れ物。薔薇ならばドラマチックな想像の種となり、同僚たちの恋バナが花咲いただろうか。制服の学生か若い女性が息を弾ませて戻ってきたかもしれないし、私だって、花を差し出してきた無精髭の青年に、一瞬、ときめいたかもしれない。
 そういえばまだ二十代の頃、好きでも嫌いでもない男性に「白いユリの花みたい」と言われて、「ユリか」と思ったことがあった。同じユリでも大輪の、芳香を放つカサブランカでは決してなかった。
 この白いユリだって、水から引き上げられてフィルムに包まれたときには、瑞々しく美しかったはずだけれど。けれどもユリは。
 誰も省みないデスクの上で、咲いた花は開ききらず、つぼみは花開くことなく、白いユリはしんなり枯れた。


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【詩】照明灯

照明灯

 
黄色いナイター照明の下
高校生たちが蹴り上げる
サッカーボールが
遅れて届く花火の音のように
とおく鼓膜を弾くから
くすんだ空に消え残った焔を
探ってしまう

夜、グラウンド脇を歩きながら
私は照らし出されない
薄闇にやすらぐ

かつて照明に守られて
仲間たちと
明るく浮かぶ舞台にあがり
向かっていたはずのフィナーレは
逃げ水のように後ずさり
気がつけば
客席で開演を待って
いる

グラウンドを背にすると
消灯。
澄んだ夜空と、雲と
雲を流す風が吹き込んで溢れる
と、見えた
かすかだけれど
たしかに落ち残っている、宇宙の灯火

 

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【詩】消しゴムと靴下

『消しゴムと靴下』


靴下であるいている
のを、担任の先生にばったり会って
危ないから靴を履くように諭された。
靴、履くことができないんです
きっとこれは私が私に課した罰だから
どうしても、履けなかった。
ちゃんと家へ帰るから、
明日、説明しますから、
必死な私を
黙って行かせてくれた
担任の先生は信頼できる人です。
今日は朝から早退しちゃったけれど
明日はきちんと学校に行って
長い話を聞いてもらう
話すことは私を楽にするだろうし
そうしたら先生も安心できる
今はただ早く家に帰って
眠りたい

T君の家にクラスの大勢で集まって
T君は私にゲームに負けて
大事にしていた(父親からもらった)筋肉マン消しゴムを
しぶしぶ、でも、笑いながら、
私に差し出さなければならなかった
ただの遊び
次の日、そう、私が早退した朝、
カバンに入ったままになっていたその消しゴムを
教室の後ろのゴミ箱へ放り込んだのを
見ていたN子が非難顔して言った
「T君の大切なものだったのに、
捨てるなんて酷くない?」

きつい言葉を放つとN子はそっぽを向いたけれど
私の怒りはだんだん積って
爆発寸前まで膨れ上がって
N子の頬を何度もなぐりつけるとか
階段から机を投げ落とすとか
そんなことをしないと収まらなくなりそうで
そうなるよりは逃げ出すことにした。
人気のない玄関で内履きを脱いで
スニーカーを履こうとしたら、どうしても
足を入れられないことに気がついて
スニーカーを右手にぶら下げて
靴下のまま歩き出した
きっとこれは罪悪感の
せいだから
靴下のまま
帰っても
仕方ない

思うでしょう?
先生



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ブログ復活しました

以前、1ヶ月間くらいかな?はてなブログをしていたのですが、すぐやめてしまいました。
書くこともあまりなくて(^^;

詩やTwitterに書くには長い文章の置場所にします。

ゆるゆるとやってゆきます。(^o^)